日々は続く。

元サブカルクソ女・現お母さんの考えること。

サブカルをこじらせて耳に大きい穴を開けたりもしたけれど、私はげんきです。

2014年に娘を出産した。

やっとのことで三歳まで育てた。私はいわゆるワンオペ育児というものをしていて、夫はとても協力的だが仕事も忙しく、土曜日が必ず休みというわけでもない。

 

夫婦共、里帰りするあてもないので必死になんとかやってきて、気づいたら娘は三歳の七五三なんかしている。

ドレスアップした娘は、我が子とは思えないくらいスタイルがよくかわいい。遺伝子は昭和なのに、今時の子独特の足の長さと、腰の細さ。顔の小ささを兼ね備えていてとても羨ましい。一重なのでまだ油断できないが、現時点では及第点ではないかと思う。

とにかく、かわいくいい子に育った。

自己満足であろうが、三年でひとつ苦労を形にして見せてくれる七五三てすごいシステムだなと思う。

 

 

お母さんである私はといえば、若い頃はサブカルを盛大にこじらせて無数のボディピアスを開けまくり、奇抜なファッションでラフォーレ前でZipperのファッションスナップに掲載されたりしていた。

 

Cutieのファッションスナップには選ばれずとても悔しかった。

 

純文学を愛し、カジヒデキフリッパーズギターを聞きつつも、電気グルーヴのライブに通いつめ、しかしながらソフトロックやジャズにも精通し、サブカルおじさんを喜ばせるヤングアイコンとして生きていたように思う。

実際見た目もおじさん受けのよいちょうどいい感じで、文学と映画と音楽の話をすると次から次に話題を出す、こまっしゃくれた椎名林檎くずれのようなよくいる女だった。

 

ご多分にもれず、お笑いに関しても一言あるようなめんどうくさいサブカル女で、それはそれはインディーズのコンビなどにも詳しく、どのコンビはどの事務所で誰々よりも後輩なんてことまで知っていた。

めんどうくさいし、気持ちが悪いなと思う。

オールナイトニッポンに見切りをつけ、早々に深夜のTBSラジオ伊集院光おぎやはぎトークに心酔し、若手の芸人のチェックも怠らなかった。

 

結婚してからも、サブカルバンドマンくずれの夫とゴッドタンを楽しみ、車ではTBSラジオポッドキャストを流し、年末の漫才の賞レースは予選スタートから把握しないと気が済まない。

お笑いについてちょっと詳しい自分、でありたかった。

 

マジョリティであることを無意識に避けていたのだと思う。

あと、圧倒的に暇だった。

 

娘を出産してから、全く寝ない新生児時代を経て、地獄の断乳、離乳食拒否、イヤイヤ期を体験して「笑いを提供するコンテンツのカロリー消費」が全然出来なくなったことに最近気づいた。

 

お笑いのカロリーは時間帯が浅いほど低い。

朝のワイドショーなんかも誰しもが理解できて、優しく受け流せるくらいのカロリーの笑い、食事でいうとなか卯の朝定食ほどだと受け止めている。

ロンドンハーツやアメトーークは疲れ果てたアラフォーの「笑いを提供するコンテンツに対してちょっと胃もたれを起こしやすい」自分には、キムチ牛丼くらい。

 

深夜帯に近くにつれ、お笑いのカロリーは高くなっていくとおばさんは思う。

 

仕事をして家事をして、イヤイヤ期の子供を保育園に迎えに行き、一人で買い物をして夕飯を作って風呂に入れて寝かしつける。

ヘトヘトというかもう抜け殻。

やっと寝かしつけて、夜泣きまでの間テレビでも見ようか…とうっかり電源を入れたら、「バラいろダンディ」が映し出されたときに、自分にはこれを消費する体力はない。と、すぐチャンネルを変えたことがある。

お富とナジャ・グランディーバの掛け合いが面白いのは、百も承知なんだけれど夜の九時ババアに大盛りカツ丼出してもそりゃ食べられるわけがない。

疲れ切ったアラフォーワンオペ育児お母さんが夜のおやつに選ぶのは、寒天ゼリー。

イケメンとレシピが見られるEテレの「グレーテルのかまど」を楽しみにしている。多分これはお笑いのカロリー的には寒天ゼリーだろう。

 

同時にサブカル的なものに対しての消費カロリーも低くないと、心がもたなくなってきた。ひとひねり入れたものを解釈するのが、とてもめんどうくさい。

あいかわらずゴッドタンも5時に夢中!も面白いとは思う。

見たいな、と思う日もある。

けれどお笑いカロリーがとても高いため、咀嚼すらできないことのほうが多い。

 

ツイ廃なので、寝かしつけのときなどはツイッターうたプリのソシャゲにかじりついているが、本音が言える裏アカウントではサブカル文化人をほぼフォローしなくなっていることに気づいた。

 

あんなに大好きだったし今でも大好きな石野卓球ですら、ちょっと胃もたれを起こすことがある。

吉田豪ロマン優光劇団ひとりバカリズムあたりも無意識にフォローしていなかった。バカリなんかOL日記をすごく楽しんでいたのに、今ググらないと名前も忘れていた。

 

西原理恵子はまだお母さんみがあるので、子育てについてのことなんかは「へえ」と思うので飲み込める。

岩井志麻子は無理だった。

ぼっけえ、きょうてえはおもしろかったけど、5時に夢中!岩井志麻子を受け入れる余裕がない。

 

何様だよ、と思う人もいるだろうが、これがアラフォーの現実なんだなーと本人は案外サラッと受け止めている。

 

毒があってとがっていたサブカル女は、ボディピアスの穴を持て余しながらお母さんになった。

 

最近一番笑ったお笑いのネタは、娘と一緒に見たキャイ〜ンウド鈴木がモノマネ芸人で営業にいくやつ。

キャイ〜ンであんなに笑ったのは初めてなんじゃないだろうか。

天野くんがマネージャーなのに、途中でめっちゃうまい尾崎豊のモノマネでカットインしてくるところが最高におもしろかった。

 

感覚が鈍っていると言われれば、そうなんだろうなと思う。

今もブログを書くのにSuchmos安藤裕子を聞いている。胃に優しい。

在日ファンク七尾旅人はちょっと重い。

まあ、そんなものは私のさじ加減なんだろうけど。

 

変化していく。

 

変化を感じてどうするわけでもない。

私はどんどん老けていく。多分これからどんどん白髪も増えていく。

今の文章を書く仕事を続けていくなら、ずっとフリーランスだろうから、白髪が目立ちすぎるようになったらおそらく金髪にする。

イライラすることがあれば、鼻にノストリルを開ける可能性もある。

でも、お母さんなので小学校の役員会にも行く。

 

普通でありたい、普通はいやだというバランス感覚がバカになってるので、いきなり髪の毛を刈り上げてみたりnico and...やスタジオクリップで服を買ってみたり、若干情緒不安定だなと思うこともある。

 

お笑いやサブカルを消化できなくなった事を嘆いているわけでもない。

経年変化なんだろう。

そして、「子育てと仕事」の二つで自分のサブカルめいた部分が出てくる余地がないくらいに満足して生きているのは確実だ。

 

0ゲージの穴を見せびらかしていた女は、おばさんになり子育てと仕事を始めた。

それだけの事が生活を変える。

嗜好品も変わって当たり前だ。

 

今朝、みいつけた!というクドカン色がけっこう強めな子供向け番組の中のクイズのコーナーで、サボさんが眉毛を白髪にしてカウンターにものすごく体を斜めにしてよりかかっていた。

あんまりおもしろいと思わなかった。多分疲れていて。

娘が「ママ、なんでサボさんまっすぐ立たないんだろうね」と言ってきた。

お母さんは、すぐ関口宏の真似なんだろうなって気づいたけど、なんかもうめんどうくさい。

夜泣きの寝不足と、朝の支度でもう疲弊しきっている時に「昔、ああいう人がクイズ番組をやっていてね…」という説明をするのはちょっとしんどい。

この番組はクドカン的なちょっと気の利いた笑いをたまにぶっこんでくる。

保育園に送る前に、ちょっとキツイ時がある。

 

今朝のサボさんのギャグに気づいたお母さんはどのくらいいたんだろう。

それを「私は気づいたけどね」とツイッターに書き込んだお母さんはどのくらいいたんだろう。

ちゃんとサブカルできてるお母さんて、嫌味でなく本当にすごい。

 

私はいまだにひねくれていて、そういうところはサブカルが抜けきっていないなあと思うんだけれども、サボさんがあんまりおもしろいと思えなかった事をツイッターに書けなかった。

めんどうくさいおばさんだと思われることも、めんどうくさかった。

 

キャイ〜ンのネタで子供と大笑いしたい。

彼女の言い間違いで大笑いしたい。

 

「子供を産んでからおもしろくなくなった」と思われて、人が離れていっても事実だから、なんとも思わない。

それでも私に話しかけてくれる友達に感謝をしたいだけで。

 

泣けるほど、アラフォーのお母さんを生きている。

 

昔、青山にあったMANIAC LOVEという電話番号すら公開していないテクノメインのクラブで、ほぼハギレみたいな服を着て「フォー」などと言いながら踊っていた女は、キャイ〜ンのネタを見ながら成仏していった。

 

友達と、閉経したらイッセイミヤケのシワシワっとしたモダンな服を着て、ヨーコフチガミみたいな髪型で、東京ドームの世界のらん展を見に行く約束をしている。

 

そのあとに、銀座で松花堂弁当を食べてアニメイトに行きたい。

 

できればその頃までに、アニメイト銀座店ができているといいなと思う。